プロフェッショナル 仕事の流儀 スペシャル「松本人志スペシャル」 2010.10.16(土)

この日 お台場 フジテレビでは特別な番組の収録が行われようとしていた。え? 2冊しかないよ!あ それそれ!出演するのは 今をときめく人気お笑い芸人たち。練り上げた話芸の冴えをこのスタジオで競い合う。フジテレビ看板番組の一つだ。本番開始30分前。控え室では 芸人たちが緊張の面持ちで 一人の男を待っていた。その男は いつものように自分で メイクをしていた。笑いの頂点に立ち続ける孤高の天才芸人。ええ加減にしなさい!待て!この男の登場で日本の笑いが変わった。本番20分前。
(一同)よろしくお願いします!部屋の空気が一変した。ほとんど明かされた事のない松本の仕事の舞台裏。そこに 半年にわたってカメラが入った。
(場内アナウンス)「大輔~ 宮川~!」。華やかなステージの裏側でカメラが とらえたもの。それは 笑いに魂を売った男の孤独な格闘だった。カリスマ 松本人志。知られざる闘いの記録。「人志~ 松本~!」。
(主題歌)即興のトーク。 練り上げた企画。カメラは 松本の笑いが生まれる瞬間をとらえた。笑いを極めようと走り続けた人生。大きな葛藤があった。長い沈黙を破る オリジナルコント。考えては壊し練り上げては捨てる。笑いを生み出す 魂の現場。78分のスペシャル版。松本人志は いつも所属事務所の車でテレビの収録現場に向かう。・おはようございます。松本は 週に5本のレギュラー番組を持つ。この日は 大勢のゲストを迎えるトークバラエティ 「ダウンタウンDX」の収録だ。既に本番30分前。楽屋で落ち着く時間はほとんどない。すぐに ディレクターがやって来た。
(ディレクター)スマイレージという ハロプロのつんく♂さんところの 一番若いユニットです。打ち合わせはこの日のゲストについてだけ。番組の中身は 一切頭に入れない。わずか1分で終わった。ゲストが あいさつにやって来た。おはようございま~す!スマイレージです。よろしくお願いします!和田彩花です。前田憂佳です。福田花音です。小川紗季です。もし よかったらCD聞いて下さい。お願いしま~す! 失礼します。
(スタッフ)すみませんスザンヌさんも来られました。スザンヌです。 おはようございます。よろしくお願いします。松本は スタッフの手を借りずいつも自分でメイクを行う。本番開始10分前。楽屋を出て スタジオに向かう。ほかの出演者は既に全員が スタジオに入っている。松本は いつも一番最後だ。
(一同)お願いします!松本は ゲストと極力 話をしない。ゲストの盛り上げ役は松本の相方 浜田雅功が担う。2人は一切 打ち合わせをしない。本番が始まるまでは目を合わせる事もない。本番が始まれば 2人は打ち合わせなしのフリートークで客の笑いを取りにいく。
(観客の手拍子)
(歓声)鳴りやまない歓声。この間 松本は瞬時にネタを見つけ出した。
(笑いと拍手)もうええっちゅうねん!本番中 松本はゲストの話に神経を集中させる。それを いかにして笑いに変えるか目まぐるしく計算する。整い前田?整い前田!この日 初登場のゲスト。デビューから間もない事もあり話に まとまりがない。だが松本はこの状況をも笑いに変えた。松本は 本番のステージで生まれる笑いに 徹底的にこだわる。浮き沈みが激しいお笑いの世界で20年以上 トップを走り続けてきた松本人志さん。芸人として誰もが認めるのがその話芸だ。子供時代 大量のゴキブリに悩まされた経験を語る 「すべらない話」。家族全員が集まりましておかんが水枕を取る役になっておねえが スリッパか何か持って兄貴は 新聞紙か何か丸めて僕は確か 「少年サンデー」的なものでこう 圧死させたろ思って。おやじはもう リーサルウェポンで アースを。
(笑い)おかんが 3・2・1のカウントダウンでパッ!て取ったら水枕と おんなじ形で大量のゴキブリ!
(一同)えぇ~!うっわ~!って壁に ブワーッて逃げてっておねえ それ見て戦意喪失してしもうて。おやじが何よりも パニックになってアースを家族全員に!
(笑い)思わず笑ってしまうトークの陰には計算された技がある。ちょっとまぁ 七並べに似てるかなとは思いますけどね。どこを止めとくかっていう感じ。うん。最後のカードは どれにすんねんっていう事ですよね。最後のカードを切った時が一番大きい笑いが生まれる時でないといけないわけですから。かと思えば あえて一発目これ切っちゃう みたいな。あえて これを見せといて とか。まぁ そうですね。どの順番までこのカードを持ってるかっていう。トークって結構 七並べに似てる感じは 僕はするんですけどね。松本さんの笑いの代名詞とも言われるのが独特の シュールな笑いだ。前半戦!架空の設定に 徹底したアドリブで松本ワールドを生み出す。
(笛)ラ~ ラミファ~!円中へ! 円中へ!ゆえに! スタンズ!ヤァ~! アーッ!タッチ! タッチ!スリー ファイ ゴー 下。ゴー!オールオッケー!
(笑い)そして 突拍子もない発想にもどこか納得感があるのが松本さんの芸の真骨頂だ。
(鐘)
(ナレーション)「写真で ひと言」。
(松本)「もうお父さんさっきの店で ええんちゃう?」。
(笑い)「いや うまいとこあんねん」。卓越した技を持つ松本さん。笑いの最先端を行く一方で 実は伝統的な笑いへの造詣も深い。桂 枝雀の落語。 藤山寛美の喜劇。伝統的な笑いの作法を踏まえたうえで独自の笑いが生み出されているのだ。松本人志は 芸人としてカメラの前に立つだけでなくもう一つ 別の顔を持つ。企画を立ち上げ 番組を構成する制作者としての顔だ。この日は 日本テレビの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」。ガァー!放送開始から22年。松本は この番組で人気企画を次々と生み出してきた。番組DVDの売り上げは300万枚を超える。毎週 本番の収録を終えた後松本は企画会議に臨む。プロデューサー ディレクター 放送作家そして レギュラー出演者が出席しアイデアを出し合う。松本は 自分で企画を出すのはもちろん皆のアイデアを吟味し面白い番組になるか判断する。スタッフが 過去に反響の大きかったシリーズ企画をもう一度やりたいと提案した。これは何ですか~?村上ショージの 「教室シリーズ」。村上が 忍者教室やドラキュラ教室などを開き松本たちが生徒として参加する人気企画だ。だが松本は 企画の枠組みそのものを変えようと言い出した。先生役を 別のタレントに代えそのVTRを 村上ショージに見せて嫉妬させようという企画。人気企画も躊躇なく変える。松本のアイデアに 会議室は沸いた。だが 企画がまとまりかけたその時スケジュール上の問題が 浮上した。この演出は 編集に時間がかかり放送に間に合わないという。企画会議は 振り出しに戻った。はあ~。会議が始まって既に 2時間がたっていた。収録は 間近に迫っている。企画は 今日中に固めなければならない。追い込まれた。これまでの人気シリーズの中ですぐに準備できるものが挙げられた。しかし 松本は乗り気でない。会議が始まって 既に4時間。松本は 全く新しい企画を生み出そうとしていた。数々の人気企画を作ってきた松本。だが それに安住し歩みを止めれば芸人は生き残れない。松本を松本たらしめる一つの流儀がある。日付が変わろうとするころ松本が 再び口を開いた。レギュラー出演者5人が一台の車に乗り豆知識を 100個話すまで車から降りられないという企画。過酷な状況に自分たちを追い込む事で笑いを生み出そうというねらいだ。5時間に及ぶ苦闘の果てに新企画の方向性が固まった。過去の笑いを捨て続ける。その覚悟ゆえに 松本は笑いのトップに 君臨し続けてきた。だが それと引き換えに笑いとは何かを考え続ける孤独な旅を強いられる事になった。この日 松本は重要な会議に臨んだ。新たな挑戦が始まろうとしていた。3本目となる映画の制作だ。で~い!松本は 映画を 自らの笑いを突き詰める場と とらえてきた。来たとこだ~!これまで監督を務めた2本の作品は実験的であるがゆえに難解だという批評もあった。ぎゃあ~!だが 松本は更に 挑戦的な姿勢を打ち出した。これまでの2作は自ら主演を務めてきたが今回は驚くべき人物を抜擢しようとしていた。その男は 新宿の飲み屋街でバーテンダーとして働いている。元気です。芸人でも俳優でもない全くの素人だ。松本は 素人の出演者を集めたバラエティー番組で この男と出会った。笑いとは何か。 その答えの一端をこの男に見いだしていた。
(松本)一番…世界で一番面白いやつって世界で一番面白くないやつなんじゃないかっていう表裏一体論があって。そういう意味じゃもうほんとに 何でしょうね…自分で面白いと思ってない。あんなに面白くない人がいないぐらい面白くないから滅茶苦茶面白いんですよね。表裏一体やと思いますね。 だからすごい魅力を感じますよね。勝負の懸かった新作映画に素人を抜擢するのはとてつもない冒険だ。それでも松本は笑いを突き詰め続ける。この日 松本の姿は都内の居酒屋にあった。親しい友人が 同席していた。幼なじみであり 放送作家として20年を超えるつきあいの高須光聖。気が置けない間柄。遠慮のない話になった。酒が進むにつれ 松本は自らの笑いの原点である子供時代の事を語り始めた。おれ ガッシャッて やってたの。スタンドを立てて。貧しかった少年時代に 松本は笑いを生み出す力を はぐくんだ。真逆なんです。きれいに真逆なんです。この夜 話は4時間に及んだ。その終わり間際松本が ぼそりと話し始めた。笑いに魂を売り笑いを極めようと走り続けた人生。だが それは胸の奥に葛藤を抱え揺れ続ける孤独な旅でもあった。1963年 松本さんは大阪湾に面した工場の街 尼崎に生まれた。家は貧しく 欲しい物は ほとんど何も買ってもらえなかった。後の相方 浜田雅功さんと出会った小学校。松本さんは 勉強もスポーツも苦手。しかも 人見知りで友達は なかなか できなかった。しかし そんなつらい状況は松本さんが持って生まれた笑いの才能で一変する。18の春 親友の浜田さんから一緒に漫才をやろうと 誘われる。就職が決まっていた松本さんだがその誘いに運命的なものを感じ吉本興業の養成所に入る。その後 2人は次第に頭角を現していく。おばあさんの鼻はどうして そんなに大きいの?おばあさんの耳はどうして そんなに大きいの?オオカミが ほっとけや ボケ。人の嫌がる事 言うな。気にしとったんでしょうね。耳 長いのね。
(笑い)ええ加減にしなさい!待て!デビューから5年目 夕方の帯番組の司会に 抜擢されると地元 大阪で熱狂的な支持を集める。その翌年 満を持して東京に進出。そして 一本の番組が スタートした。数々の名作コントを生み出しその名を全国に とどろかせた代表作「ダウンタウンのごっつええ感じ」。・「こんなこといいなできたらいいな」こら!やめなさい お前は!何時だと思ってるんだよ。母さん起きるじゃないか!大きな声 出して!こら~!こら!とあ~!誰や 今 大きい声で どんどん鳴らしとったのは? お前か!カ カ カッパや。何時や思うてんねん 今。今 何時や?10時 回っとるやないか!寝てる人もおんのや!10時回ってるのは もう深夜や。言うたら。 こら! え?お前かて なんや。「母さんが起きるじゃないか」。なんや 母さん起きんかったらうるさかってもええいう事か。何考えとんのや アホ!気ぃつけよ! 分かったんか。おう。 しゃあないな。こういう事したぁないけどこれとこれは 没収や。待たんか こら!
(笑い)わしが坊主のために買うてきたんやないか。なんで お前…。何が没収や あほんだら!作り込んだ笑いを追求するコントの世界に松本さんは のめり込んでいく。スタッフたちと一つの事を誓い合った。最高の笑いを求めて本番ギリギリまで内容を練るため収録が終わるのは いつも深夜。その後 企画会議を朝まで寝ずに行った。これで しゃべったらもう警察が来るんやで。記憶に残るコントを次々と生み出したこの番組は若い世代を中心に熱狂的な支持を集める。しかし 新しい笑いを突き詰めていく中で松本さんが作るコントは次第に先鋭的な色合いを増すようになる。料理番組の講師が理不尽に暴れる「キャシィ塚本シリーズ」。とお~!ドアを閉めるか閉めないかのうちに ドーン!おじさん!コントの可能性を追求し尽くす。松本さんは40分近い大作も作った。しかし 松本さんの笑いは視聴者の多くが求める笑いと次第に乖離していく。こんな声がささやかれるようになった。放送開始から7年目。1,300本のコントを残し番組は その歴史に終止符を打つ。松本さんは その後心血を注いだ テレビコントの世界から遠ざかる事になった。多くのファンの求める笑いと自分が目指す新しい笑い。2つの笑いのはざまで松本さんは 格闘し続ける。はい カット!さまざまなバラエティー番組に取り組む一方で3年前には 映画という新たな領域にも踏み込んだ。しかし 心の中の葛藤が消える事はなかった。そして コントへの思いも。居酒屋の夜 松本さんはこんな話をしている。この春 一つの仕事が始まろうとしていた。NHKと組み オリジナルのコント番組を作る事になったのだ。
(一同)おはようございます。地上波テレビのコントは実に 9年ぶりの事だ。松本は 最も信頼する放送作家たちを集めていた。47歳となった今どんなコントを目指すのか。そのイメージの一端を 話し始めた。もうちょっと こう…そして松本は具体的なコントのアイデアを語った。この日は 顔合わせだけの予定だったが松本は 次々とコントの案を出し続けた。伝統のなまはげを モチーフにそれを更に恐ろしくど派手にした コント。ここ バーン 開けたら バラバラバラバラ出るみたいなね。 例えばね。ミサイル ドーン ドーン ドーン ドーンみたいな。白板は 松本のアイデアで埋め尽くされた。中でも 熱く語ったコントがあった。どんどん組み立てていくねんけどいつまでたっても何だか分からへんみたいな。通信販売で手に入れた機械をひたすら組み立てる男のコント。その機械のイメージを 膨らませる。訳が分からないものを組み立てていながら本人は喜々としている。松本が得意とする シュールな笑いだ。いや… でも 大変やで これ。まあ… 「ええわ~」かなと思ったんやけどな 最初はね。オチのつけ方など見えない部分はあるが松本は 手応えを感じていた。この日は 5時間ぶっ通しで会議を行い松本は 一人で6本ものコントを考え出した。その中で 一つの決意を口にした。ほかの芸人に頼らずすべてを自分で背負う。静かな覚悟が そこにあった。2週間後。 2回目の企画会議が行われた。松本はいきなり 前回の会議で出た6本のコントの再検討を始めた。2本のコントをラインナップから外した。そして 新しいコントをゼロから考え始めた。何かいうたら ジョーみたいになって死んでるのが…。話し始めたのは ダウンタウンが得意としてきた ブラックなコント。絶対 今 死んだらあかんとこってあるじゃないですか。タイミングの悪いところで死んどるなっていう事が果たして あるのであろうか。間の悪い死に方を笑い飛ばそうという アイデアだ。メンバーの反応は上々。しかし 言った松本本人が突然 厳しい表情になった。いや まあ。 うん…。結局 それ以上このアイデアを練る事はなかった。松本は 思いつくままにコントのアイデアを語りそして それを捨てる作業を繰り返す。今 目指すべきコントは何か。その答えを探しているように見えた。会議が始まって 3時間。残っているコントの内容を詰める作業に取りかかった。「組み立てる男」のコントに具体的な肉づけをしていく。ダイエットマシーンというのが今のところ有力なんです。ビューンて伸びてて 先に スチロールの玉みたいのが付いてるのがなんか 回っとるんでこうやりながらもたまに よけなあかん。商品は ダイナミックアリゲーターと名付けられた。たまに ダイナミックアリゲーターから何か ピロッと出るんでそれを こうやって挟まなあかん。それを うそくさ~いもうDVDが入っているのでまあ 説明書も見ながらまあ DVDを入れたらまあ こっちと うそくさ~い外人とのやり取りで見せていくのが もしかしたらいいかもしれないですね。説明用のDVDに 外国人が出てきておかしなやり取りをする。意味不明の付属品で 笑いを取る。アイデアが出すぎて収拾がつかなくなってきた。松本は いったん検討を打ち切った。コントの企画会議と平行して松本は 週に5本のレギュラー番組に出演していた。長く テレビコントと離れていた松本。その間 プライベートでは大きな変化があった。昨年 結婚。10月には長女も生まれた。
(一同)お疲れさまでした。笑いの荒野を歩いてきた男が迎えた 大きな人生の転機。その中で松本は かつてのコントを再び見返したという。おはようございます。3回目の企画会議が 開かれた。ダイナミックアリゲーターがもう グッチャグチャじゃないか。「組み立てる男」のコントについて松本が話しだした。松本たちは笑いのポイントを整理し始めた。もしかすると一応 DVDをつけてほうり込んで…映像 見せないですけどこの流れを ガイドの声はあってもいいかも 分かんないですね。その専門用語をちゃんと言うてくれるか。
(松本)その手順に従って僕は動いてるだけっていうのも…。DVDの音声ガイドに従って機械を組み立てる。シンプルな設定にして 考えていく。動かそうとしたらまるで見てたかのように「本体には基本的には絶対に触らないで下さい」。え~!この際に ここで言う?
(高須)え え え~ みたいな。無茶苦茶な音声ガイドに振り回されながら無茶苦茶な機械を組み立てるという方向に 収れんしてきた。笑いのイメージがくっきりしてきた。そして 機械のイメージをイラストに起こす。放送作家の倉本美津留とアドリブで掛け合いをしながらコントの流れを決めていく。機械の値段は 15万円。名前は「D・A・P」ダイナミックアドベンチャーポータブルと変えられた。大きな課題は最後のオチを どうするか。
(笑い)
(倉本)電話して。企画会議は延べ 25時間に及んだ。この間 松本は一人で 15本のコントを考え出しその中から 番組を構成する6本を選んだ。かつて ダウンタウンの代名詞とも言われた ブラックな笑いはそこには なかった。松本が たどりついたのは装飾を そぎ落としシンプルに笑いと向き合う コント。残るは 細部の詰めと本番の収録。そのやさき思いもよらぬ事が起きた。股関節に 強い痛みがあった。病院での診断は左股関節唇の損傷。手術と 長期休養が決まった。コントの収録は 復帰を待って行われる事になった。2か月後の 9月13日。
(スタッフ)おはようございます。松本が NHKに入った。いよいよ 「ダイナミックアドベンチャーポータブル」の本番収録に臨む。
(一同)おはようございます。ほお~。
(倉本)なるほどね。 ジェルなあ。
(スタッフ)速くなりますよ。まあ そうですね。ああ そうですね。それぐらいあっても いいと思う。
(倉本)これぐらいの方が面白い。ウィンウィン うなってるし。本番ぎりぎりまで台本に手を入れる。うわ 何や アゴずれって。怖いな~。ジャジャジャン。何やねん。台本には 音声ガイダンスのせりふは書き込まれているが松本は 基本 アドリブ。最後のオチについては打ち合わせで出た2つの案が書き込まれていた。「では 電源を一度切ってダイナミックウイングを…」。本番 30分前。松本の表情が 厳しくなってきた。誰よりもコントを愛し情熱を燃やしてきた。だが その愛ゆえに 松本は長い沈黙を余儀なくされた。
(スタッフたち)お願いします。
(撮影スタッフ)5秒前。 4 3 2。
(チャイム)え…?誰?はい。・お届け物です。ああ どうも。ああ どうぞ。ありがとうございます。うわ!ここで よろしいですか?はい。重っ!いや これ ええわ!来た。 来た。明日やと思ってたから。来た! 来た 来た!う~わ!めっちゃ テンション上がってきた。うわ…。めっちゃ ええやん。思ってたより めっちゃええやん。DVDで 見ながらやれっていう事や。うわ! めっちゃ優しい感じやん。分かるわ~。めっちゃ ええやん。これで ちゃんと説明が もうDVDで できてまうねんもんな。
(DVD音声)「本日は ダイナミックアドベンチャーポータブルを お買い上げ頂き誠に ありがとうございます」。いえいえ こちらこそ。「この ダイナミックアドベンチャーポータブルはダイナミックアドベンチャーをご家庭でも楽しみたいという多くのリクエストを受けて開発された新商品です」。めっちゃ いいっすよね。「これからは 家にいながらダイナミックアドベンチャーの醍醐味を味わえるんですよ」。
(松本)たまんないっすよね~。「それでは これから組み立て方をご説明します。ダイナミックアドベンチャーポータブル本体を箱から出して下さい」。
(松本)はい ありがとうございます!なるほどね。このタイミングで 出さなあかんねや。遊び心あるな。「なお 本体を出す前にほかの パーツセットには絶対に触らないで下さい」。無理やな。 それは無理やわ。だって 絶対 下にあるし。これ出さんと 無理やもん。何や これ。 よう分からんな。ええねんな? ええよな 知らんで。
(DVD アタック音)何やねん。この さっきから出るやつ。「エレファンティックチューブの先は 必ず窓から外に出して お使い下さい」。そうなんや。「出さずに 長時間ご使用の場合めまいや おう吐 アゴずれなど健康を害する おそれがあります」。アゴずれって何や。 怖いな~。こわ! 何や アゴずれって。ま 動詞と名詞が入ってるから何となく分かるけど。で これ 短いな~。短いな~。 どうしよ。「基本的に本体には触らないで…」。ええ~ うそ!それ 無理やろ! もう結構触ってるで? このタイミング…。「どうしても持ち運ばなければならない場合はヘッド部分に付いている フィンガーリングに指を入れて 持ち上げて下さい」。ああ これね。これで こう持つんや。指 引きちぎれるわ! これ。イタ!「では お待たせしました」。
(松本)はい ありがとうございます。「電源を入れて下さい」。
(松本)はい 電源入れます。ええ~… はい。はい?「ダイナミックウィングを差し込んでから」。倒置法や。ええ~? そこ 倒置法?
(松本)よっしゃぁ。そしたら これで… オンだ。
(モーター音)
(ウィングの開閉音)この… このスイッチ何やったっけな。何や これ。これ 何? これ。いよいよ 最後のオチ。「ええわあ」と言い続けるか「値段が高い」と文句を言うか。松本は 受話器を取った。もしもし。 もしもし。あの お客様相談室ですか?あの はい。 そうです。今日… はい 届いたんです。あの 組み立て終わったんですけどしばらく使ってみたんですけどなんかアゴが痛いんですよね。アゴが痛くなってきて。その場にいた全員の意表をつく渾身のアドリブだった。イッタ~。いいですか?
(撮影スタッフ)ありがとうございます。そっちやったか。
(笑い)
(モニター音声)「アゴが痛くて」。
(笑い)カーブばっかり投げてくるので僕は その裏をかいて…。自ら選び抜いた6本のコント。そのすべてに 松本は全身全霊を懸けて臨んだ。笑いに魂を売った時からその闘いは始まった。はってでも荒野を行く。あえて 安住の地に背を向けて。えっと~素人に圧倒的な差をつけて 力を見せつける事じゃないですかね。う~ん。 …と思いますけど。

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